10/28付のCNBCの記事を読みました。米中貿易戦争が始まって以来、企業は生産の一部を中国からベトナムへ移しています。そのベトナムは受け入れの限界があるよということを記事は指摘しています。以下、記事の要約です。
◆要約
・米中貿易戦争開始後、両国は互いに関税を掛け合う。コストアップを回避するため、企業は物の調達先をその他の国へ変更する必要に迫られる。ベトナムは、貿易の流れとサプライチェーンの代替として好まれる場所。
・米中貿易戦争の最中、ベトナムの輸出金額は増加(下記グラフ1参照)。アメリカへの輸出増が要因。対する中国からの輸出金額は減少。完成品を一旦中国からベトナムへ移し、ベトナムで再梱包、ベトナム製品としてアメリカへ輸出する企業もある。
・ただ、ベトナムにもボトルネックがあり、同国の構造上、受け入れには限界がある。
・中国は製造業セクター、そして経済圏として巨大。そのため、企業は効率よく事業を運営できる。一方、ベトナムは製造拠点としては小さい(下記グラフ2参照)。生産拠点として、1国で中国の代わりをすることは不可能(調査会社Fitch Solutions)。
・ベトナムの人材は教育、スキル、健康レベルで中国の人材と比較すると劣る(調査会社Fitch Solutions)。ベトナムは若い(15歳以上の)労働人口も拡大している。ただ、単純に労働者数を比較すると、中国とベトナムでは大きな差がある(下記グラフ3参照。14倍の差)。
・世界経済が後退する一方、ベトナム経済は成長中。しかし、世界第2位の経済をもつ中国と比べると差は歴然(下記グラフ4参照)。製造拠点として、中国の代わりをするには限界がある。
<グラフ1>中国とベトナムの輸出金額
(出典:China customs, Vietnam customs, Refinitive, CNBC)
<表>ベトナムへの生産拠点移転を計画中の主要企業
(出典:News sources, Fitch Solutions Oct 2019)
<グラフ2>製造業生産高シェア
(出典:Word Bank, OECD, CNBC, 2017)
(出典:International Labor Organization, Word Bank)
<グラフ4>中国とベトナムの経済規模の比較
(出典:Word Bank, OECD)
中国とベトナム、当然、両国経済の間には大きな差があるとは感じていましたが、こんなに差があるとは思いませんでした。データで見せられると説得力があります。
輸出金額(グラフ1)の差も凄いですが、製造業生産高(グラフ2)の差はなんと100倍です。中国は、この差を実現するインフラをすでに持っているので、企業も簡単には中国を捨てられないですね。労働人口の差(グラフ3)もすごいです。
ちょっと恐ろしいです(^ ^; 世界第2位の経済力を持っているだけあります。
今回の貿易戦争をきっかけに、中国は他国に仕事をどんどん奪われていくのかなと思っていたのですが、ちょっと落ち着きました(^ ^; もう少し冷静に動向を観察できそうです。
少し横に逸れますが、製造拠点として、アメリカのシェアが高いのが意外です。私にとっては驚きでした。今、トランプ大統領ががんばっているので、シェアは上がっていそうです。
最後に。この記事に載っていた5つのデータの内、3つがWorld Bankが元ネタでした。World Bankのウェブサイトには面白そうなデータがあるかもしれません。また、覗いてみます。
以上
◆参考文献
CNBC, "These charts show Vietnam is far from matching China’s manufacturing prowess"