12/2付の日経新聞の記事を読みました。以前より、中国は台湾の半導体企業から人材を自国へ引き抜いているが、その動きを速めているという内容です。以下、記事の要約です。
◆要約
・中国は自国の半導体産業強化のため、台湾からの人材獲得を進める。世界最大の半導体受託製造企業TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)がターゲットで、上は経営幹部から、下は現場技術者まで人材を採用する。これまでで累計3,000人超。
・台湾で半導体業界に従事する技術者は約4万人強のため、3,000人超という数字は1割に近い。
・人材の流出は2000年からスタート。台湾の起業家リチャード・チャン氏は事業をTSMCへ売却後、中国へ渡り、SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)を創業。同社はTSMCの競合となり、同業界で第5位(中国No.1)。チャン氏は中国へ渡る際、数百人の部下を共にしている。
・他にもTSMCの元COO、研究開発部門の幹部、台湾DRAMのゴッドファーザーと呼ばれた人物を中国は獲得。
・2015年に中国政府が発表した「中国製造2025」がこの動きを加速する。
・米中貿易戦争で半導体がボトルネックとなったことが、この強化活動の背景にある。
・半導体製造には製造装置と、それらを操作する熟練技術者が必要。そのため、中国は現場技術者の採用も進めている。給与は台湾の2~3倍。
・台湾は法改正、待遇引き上げで対抗するも、流出は防げていない。
・2020年、中国は半導体製造装置で(台湾を上回り)世界最大の市場となる見込み(SEMI、国際半導体製造装置材料協会)。
・アメリカがTSMCに対し、軍事用半導体をアメリカで生産するよう打診中。
・半導体産業を強化することで、中国は台湾を自国に取り込もうとしている。また、今年の11月に中国は台湾へ26の優遇政策を提案(中国での公共事業参入許可、個人事業、留学支援など)。2000年代、台湾は世界No.1の液晶パネルメーカーであったが、現在は中国がNo.1、台湾の同産業は衰退傾向にある。
・中国は台湾の空洞化を狙っている(台湾成功大学の蒙志成准教授)。
(情報を盗んだりするなど悪事を除けば)中国の戦略はすばらしいですね。世界第2位の国まで上り詰め、第1位の座を狙う実力をつけているのはわかります。
これはとてもじゃないけど日本は太刀打ちできません。アメリカもどうなることやら。成功へ向かって最短距離で進んでいる感じです。
近い将来、半導体業界でも中国企業が台湾企業に代わり、上位に出てきそうです。
お金はどこから出てくるんでしょうね。独裁政権なので国、企業の無駄を減らせること、自国に巨大な需要があることが要因でしょうか。それから、優秀な人材も自国で育成できることも重要ですね。
怖いのは台湾の空洞化という言葉です。アメリカがこれからがんばっても、よほど脅さない限り、空洞化は避けられないんじゃないかと個人的には思います。個人の意思までコントロールするのは難しいですし。私が台湾人で(かつ優秀な人間だったら)、中国企業から誘われれば行ってしまうと思います。
中国の力は無視できないですね。今私はアメリカ株にだけ投資していますが、将来は中国株に手を出す時が来そうです(^ ^;
以上
◆参考文献
日経新聞、"中国、台湾人材3000人引き抜き 半導体強化へ"
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52860580S9A201C1FFJ000/