3/30付の日経新聞の記事を読みました。エッジコンピューティングの話です。データセンターとユーザーとの間にコンピュータを置いて、データセンターの負荷低減、通信速度の遅延解消を目指すための技術を指します。
エッジは縁(ふち)、現場に近い場所という意味を表すとのこと。記事は、この技術の応用例を業界ごとに解説しています。以下要約です。
◆要約
・エッジコンピューティングは様々な業界で活用されている。データ送信、処理の効率化だけではなく、情報収集、分析、判断をサポートする。企業も同技術を重要視しており、2019年末、決算発表での言及回数で、エッジコンピューティングがクラウドを上回る(下記グラフ参照)。
<グラフ>決算発表での言及回数、クラウド v.s. エッジコンピューティング
(出典:日経新聞)
・エッジコンピューティングが応用されている主要業界を以下に挙げる。
>>>農業
・スマート農機、ドローンが集めたデータを、エッジコンピューティング経由でクラウドに送る。情報をエッジで取捨選択することで分析が可能。クラウドへのデータ送信コスト削減にも。また、AI搭載により現場での迅速な判断に繋がる。
・アメリカのBlue River Technologyは除草AIロボットを開発。作物、雑草を識別し、必要な場所にだけ除草剤を散布。同ロボットにはエヌビディア(NVDA)のエッジプラットフォームが採用される。
・アメリカのSlantRange(スタートアップ)はドローンを活用した最適な作物の生育を研究中。マイクロソフトは同社にエッジプラットフォームであるアジュールIoTエッジを供給。
・アマゾンはMachineShop(IoT向けソフトウェアインフラ)、Free Wave(地方圏でのエッジサービス提供)と提携、同社のクラウドサービス(AWS)を提供することで、産業向けエッジサービスに参入。
>>>自動車
・エッジ技術を活用することで、リアルタイムでの判断が実現可能。
・AECCは自動車業界でのエッジコンピュータ普及を目指す団体。参画する企業は共同で同技術の応用例について研究、開発を行う。トヨタ自動車、デンソー、インテル(INTC)、サムスン電子などが参加する。
・アメリカのRecogniはビジョンシステム、中国のHorizen Roboticsはエッジコンピュータの半導体を、アメリカのQuadricはエッジコンピューティングの開発を担う。いずれもスタートアップ企業。
>>>エネルギー
・スマートグリッド(次世代送信網)にエッジ技術を使用することで、電力の需要にリアルタイムで対応、電力供給の効率化を図る。また、現場レベルでデータを選別し、予知保全機能の向上に。
・ドイツのボッシュ(エネルギー管理プラットフォーム)、アメリカのTantalus Systems(スマートグリッドシステム)、アメリカのDroneDeploy(熱データを利用した危機管理システム)などが開発を進める。
>>>金融サービス
・エッジコンピューティングでの情報分散、データーサーバーへの送信頻度低減で、情報の機密性を高める。また、処理速度の向上により、より迅速な判断を下せる。
・マスターカード(個人ID管理)、アメリカのPixeom(市場データ分析他。インテル、サムスンが出資)、中国のウィーバンク(機械学習。テンセントと提携)などがこの分野で研究、開発を行う。
>>>ゲーム
・映像の質の向上、低遅延、高速通信が期待できる。
・アメリカのMobiledgeXの技術はポケモンGOに採用(ナイアンティックと提携)。AT&Tは高画質、低遅延のゲームを実現(エヌビディア、エリクソンと協業)。
>>>医療
・金融業界と同様、情報機密性を高められることが利点。エッジコンピューティング上でのAI学習→患者データの共有なしでAI機能の向上→医療の質向上に繋がる。
・モニタリング能力の向上。
・アメリカのOwkin(AI医療)にはエヌビディアがエッジプラットフォーム「エヌビディアEGX」を提供。
・GEは自社の医療機器にエヌビディアの半導体を採用。AI上でのエッジ機能向上が主目的。
>>>製造業
・工場内データのリアルタイム管理に活用。データを取捨選択することで、データ送信コスト、通信負荷の低減に。また、機器の故障、オンライン上の危機の検知にも活用される。
・アメリカのFalkonry(予測分析)、アメリカのFoghorn(機械学習、産業用IoT)、マイクロソフト(アジュールIoTエッジ)、Arundo Analytics(産業用IoT)などが、同業界向けにソリューションを開発、提供中。
>>>小売り
・無人店舗にエッジコンピューティングは重要。
・アマゾンは「アマゾンGO」を一般向けにオープン済み。エッジコンピューティングは、店内の顧客をカメラでモニタリングする際に活用されている。
・ウォルマートは、エヌビディアのエッジプラットフォーム「エヌビディアEGX」を採用方針。プロセスの自動化、店舗内での顧客の体験向上が目的。同プラットフォームはリアルタイムのAIコンピューティングを提供する。
・オランダのアホールド・デレーズは、受注配送機能付き無人店舗を実験中。アメリカのAiFiが同店舗にセンサーやカメラを提供する。
・アメリカのZippinはレジなし店舗向け技術を供給する。エッジコンピューティングにより、顧客の総合的な特徴を判断する。
エッジコンピューティングがなんとなく理解できました。個人的に気になっていた言葉なので、今回記事を読みました。市場はまだ小さく、これから拡大が期待できそうです。
元から各業界で活動している企業に加え、クラウドや(半導体含む)部品屋さんが恩恵を受けそうです。スタートアップなど新規参入企業もいます。
エッジプラットフォームという言葉も出てきました。ソフトウェアだったり、ハードウェアだったりします。ここを抑える企業は強そうです。
大手のハイテク企業も名を連ねています。マイクロソフト、エヌビディア、アマゾンとよく聞く企業もいます。
どの銘柄も株価は高いです。暴落後のアマゾン、マイクロソフトの株価上昇は知っていましたが、エヌビディアもかなり戻しています。ちょっと手を出しずらい値段になってきました。
大手ハイテク企業はやっぱり将来も期待できそうです。エヌビディアも買いたい銘柄の1つになりました。同社についても調べてみたいと思います。
以上
◆参考文献
日経新聞、"エッジコンピューティングの活用進む8つの業界"
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57251700W0A320C2000000/