アメリカの銀行に課されたストレステストの記事を読みました。Reuters(6/27付)と日経新聞(6/26)のものです。以下要約です。
◆要約
>>>Reuters
・今回のストレステストの結果、大手33の銀行の中核的自己資本(返済の必要がない資本)比率は7.7%。最低ラインの4.5%を上回る。テストの条件はW字型の景気回復、FRBが通常用いる最悪シナリオよりも厳しい。
・自社株買い禁止、増配禁止という条件をFRBは銀行に課す計画。期限は第3四半期が終わるまで。延長の可能性あり。
・ただ、アメリカの大手銀行はすでに自社株買いをストップ。また、銀行株を保有する投資家にとって、配当の優先順位は高くない。
・今回ストレステストをパスできたのは金融危機後の改革のおかげ。最大手8行には(8月に公開され、10月より施行される)追加のテストあり。
・新型コロナウイルスの影響は不透明だが、今回のテスト結果を見る限り、銀行に対する改革は機能している。
>>>日経新聞
・ストレステストの結果、景気動向がW字型なら6,800億ドル、U字型なら7,000億ドルまで銀行の貸倒損失が積み上がる(下記グラフ1参照)。
<グラフ1>リスクシナリオ毎の貸倒損失率(単位:%)
(出典:FRB)
・大手銀行の中核的自己資本比率は、U字型で8.2%、W字型で7.7%という結果。
・今回、銀行毎のテスト結果は非開示。一部の銀行はW字型時、中核的自己資本比率が5%未満となっており、市場の不安を回避することが目的。
・FRBは大手銀行に自社株買い、増配の禁止を要請。自己資本比率の維持が目的。配当総額は過去1年間の利益が上限。減益幅が大きいウェルズファーゴは減配の可能性あり。
・大手6行の株主還元額は2019年で1,500億ドル超。この10年間で10倍弱に増加(下記グラフ2参照)。
<グラフ2>主要6行の株主還元額推移(JPM、BAC、C、WFC、GS、MS)
(出典:FactSet、各銀行資料)
・当初、FRBには配当停止案があったが、配当停止→株価下落→資本調達が困難になるというリスクを回避するため、配当維持という結果に。
・配当維持に反対する意見もあるため、FRBはバランスを取る必要がある。
今、銀行株に興味を持っているので、目に留まった記事です。ストレステストは無事通過したようでよかったです。
気になったのが、配当総額は過去1年間の利益が上限というもの。ウェルズファーゴなどは減配の可能性があるとのこと。一旦期限は第3四半期まで、延長の可能性もあります。
今、銀行銘柄が安いですが、このような不安要素もあったんですね。どの銀行が減配するのか、6/29、現地で報道されていました。各銀行のコメントが記事になっています。主要6行の直近の配当予定は以下の通りです。
維持予定:BAC、C、GS、JPM、MS
減配予定:WFC
市場の予想通り、ウェルズファーゴは減配予定です。同社の株価は配当率は約8%と異常に高かったので、市場はよくわかっています。JPモルガンは配当維持予定ですが、将来の見込みが急激に悪くなったら、減配も考えるとコメントしています。
今回の記事はちょうど良いタイミングでした。少しですが、銀行銘柄の知識が増えました。今後の銘柄選定の参考にします。
以上
◆参考文献
1)Reuters、"コラム:米銀の改革奏功、二番底織り込んでも健全性なお合格"
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-us-banks-idJPKBN23X0CI
2)日経新聞、"FRB、米銀監視強める コロナ危機で74兆円損失懸念"
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60828550W0A620C2EA4000/
3)CNBC、"JPMorgan, Bank of America, Citi and Goldman maintain dividends post-stress tests, Wells Fargo to cut"