4/24付のSeeking Alphaの記事を読みました。バンクオブアメリカ(BAC)、ウェルズファーゴ(WFC)、JPモルガンチェース(JPM)の3行を比較する分析記事です。2020Q1の決算結果を受けてのものです。以下要約です。
◆要約
・私(筆者)はポートフォリオ内の株式数を制限しており、大手銀行株の保有も1銘柄だけ。何年間もWFCを保有していたが、4年前にBACへ変更。この2行にJPMを加え、比較する。
・以下は3行のNet Interest Income(NII、資金運用利益)とNet Interest Margin(NIM、その利益率)。3行とも安定、良い数値で、大差なし。
<表1>資金運用利益とその比率
(出典:各銀行の決算資料)
・以下はNon-Interest expenses(非利息経費)、及びEfficiency Ratio(ER、非利息経費と売上の比率)。BACとJPMが少し増加しているのに対し、WFCは減少(前年同期比-6.5%)。
<表2>2020Q1のNon-Interest expensesとEfficiency Ratio
(出典:各銀行の決算資料)
・WFCは自行を再建中で、規制が基になっている罰金、課税、成長阻害要因で経営が制限されていることが背景にある。
・経費が減っているにも関わらずWFCのEfficiency Ratioは上昇。これは同行の売上が大きく落ちている(-18%)ことが主要因。
・表3は3行の純貸し倒れ償却比率(純貸し倒れ償却と貸出金の比率、Net Charge-Off % ratio)。
<表3>3行の純貸し倒れ償却比率(NCO% Ratio)
(出典:各銀行の決算資料)
・BACは前年同期比ではわずか3bpsの上昇。WFCのNet Charge-Off % ratio(NCO% ratio)は一番低いが、2019Q2の0.27から大幅上昇(悪化)。JPMのNCO% ratioは一番悪いが、過去1年間で数値は安定。
・(新しい貸倒引当金算出モデルである)Current Expected Credit Loss(CECL、現在予想信用損失)規制により、各銀行は(貸し倒れを考慮し)かなり多くの準備金を確保。JPMはバランスがとれており、BACは民間向けクレジットカード事業に懸念があるようにみえる。WFCは石油、ガス企業向け貸付、リース事業に対処が必要。
・全てを考慮すると、JPM、BACには同意、WFCのエネルギー事業に懸念あり。
・新型コロナウイルス、及びエネルギー価格の急落による景気後退は全ての銀行に重くのしかかる。以下は貸付金、預かり金、売上の前年同期比成長比率。
<表4>前年同期比の成長率
(出典:各銀行の決算資料)
・JPMが優位。民間以外からの預金が大きく伸びたため。利益が大幅下落したWFCは3行の中で最下位。
・以下、2020Q1決算発表での各企業の発表内容。
BAC...いくつかの良い経済データ、一般的な意見を述べる。業績見通しについてはほとんど言及無し。景気後退は2021年も継続。
WFC...U字型の景気後退、回復を想定。業績見通しについてはごくわずか。現在の不確実性を強調。将来を予測するのはかなり難しい。
JPM...経済見通しについては比較的、多くのコメントを述べる。業績見通しの開示も最も多い。
・分析の結果、JPMとBACはWFCよりも優位。差異は大きくない。
・JPMとBACは投資家に、より熟練した経営を提供する。WFCは規制期間後のまだ自行の再建、再構築中。経営陣は良いが、組織はまだ改善の道半ば。
・3行とも景気後退を予想しており、2020Q2の業績はQ1と比較し、悪化見込み。
・以下、3行の株式評価。
BAC...収益見込みからは一番安価。2021年は競合と比較し、早い収益成長が期待される。配当率は同業の中でも一番低い。支払いは安全だと信じている。
WFC...株価は最も安く見える。配当率はかなり高い。決算発表時、同社は配当支払いは安全だと述べるのをためらうように見えた。
JPM...株価は一番高い。投資家の多くは同行、その経営陣は1番、もしくはトップの中の1行と考えている。しかし、私は同意できない。
・リスク、バリュープロポジション(その企業だけが提供できる価値)から、私(筆者)はBACがベストと主張する。JPMは良いが一番高いので、BACが優位。投資家は多くのリスクを取ることなしに、長期のリターンを得られると信じる。
・WFCは一番安価だが、長期のシステミックリスクが少しある。また、配当維持が懸念。BAC、JPMと違い、WFCは配当支払いを保証しなかった。
・2021年の景気回復を予想すると、各行のFair Value(適正価格)は以下の通り。
BAC:$30~$33(4/22起点で、最大45%のリターン)
JPM:$100~$115(4/22起点で、最大33%のリターン)
WFC:$37~40(4/22起点で、最大50%のリターン)
・以上の分析の結果、BAC、JPMはWFCよりもファンダメンタルズがより強い。また、BAC、JPMには、より確立した熟練の経営陣がいる。
・WFCのリターンが一番大きいように見えるが、配当維持の懸念が相殺する。WFCの減配が差し迫っているとは思わない。ただ、新しい経営陣、規制されている資本投資、続く精査など、BAC、JPMにはないリスクがある。
・バランス的にはJPMよりもBACの方が良いと私(筆者)は信じる。仮にJPMを保有しても、わざわざBACに買い替えるようなことはしない。両行とも不況から良い形で脱出し、投資家へリターンを還元する余裕があるだろう。WFCの投資家は経営を注意深く評価する必要あり。
私は銀行の将来を少々不安視しています。銀行のビジネスモデルが将来も生き残るのかわからないと個人的には感じるためです。金融業界に詳しくない私みたいな素人が想像するのはちょっと難しいです(^^;
それでも、銀行銘柄は買ってみたいと最近また思うようになりました。3月から市場平均株価は大きく持ち直していますが、銀行株には資金の戻りは少なく、割安に感じるからです。WFCに至っては、3月後半の底と同レベルの株価です。
配当率だけみるとWFCに飛びつきたいところですが、先日同行は減配を発表しました。また、BAC、JPMと比較し、売上が大きく減少している点も気になります。筆者が指摘するように、同行には不安要素が多いので、WFCはパスしたいです。
今回上げられた銀行の他に、Citigroup(C)、Goldman Sachs Group(GS)、Morgan Stanley(MS)、U.S. Bancorp(USB)と選択肢はあるので、もう少し調べてみたいと思います。
以上
◆参考文献
Seeking Alpha, "Big Bank Comparison: Bank Of America, Wells Fargo, And Chase"
https://seekingalpha.com/article/4339695-big-bank-comparison-bank-of-america-wells-fargo-and-chase